1月号 「朝の大ゲンカ!」柳谷行勇(奈良)

1月号「朝の大ゲンカ!」柳谷行勇(奈良)

[選評]決定的瞬間と良い光を同時にとらえられていて、動物の生態写真ではなくアートとして昇華していると思う。鹿の動きも見事ながら、背景の光芒の取り入れ方と、構図が絶妙で、現場を知り尽くした地元の方ならではの作品だと痛感しました。それは同時に多くの撮影時間をかけられている証だと写真から読み取れました。奈良で「鹿と言えば柳谷さん」になってください。(相原正明先生)
キヤノンEOS7D MarkⅡ・EF70~300ミリ・F4・1/125秒・キヤノンPIXUS PRO-10S・松本洋紙店光沢/奈良市・9月上旬,7:00頃

 

 

 

2月号 「森の記憶」小林順一(埼玉/写団光彩,東松山写真クラブ,二科会写真部埼玉支部)

2月号「森の記憶」小林順一(埼玉)

【選評】荘厳な雰囲気に惹かれてレンズを向けた作者の思いが伝わってきます。ローキー調に仕上げられた描写感からはゾクゾクするような作品の重みを感じます。光線状態に露出設定、さらにはプリント用紙の選定と作者の鋭い思い入れ、感性が伝わってきました。とらえ方によってはなんでもないものが凄いものに化けることもあれば、凄いものが平凡になってしまうこともあります。現場での着眼点をいかに作品化するか、この一枚が教えてくれます。(田中達也先生)
キヤノンEOS6D・EF24~105ミリ・F9・1/50秒・ISO640・キヤノンPIXUS PRO-10S・キヤノン写真用紙微粒面光沢ラスター/群馬県草津町・7月中旬,14:00頃

 

 

 

3月号 「刹那の煌めき」飯間由香里(香川/日本風景写真協会,香写aRT)

3月号「刹那の煌めき」飯間由香里(香川)

【選評】光を浴びた氷の粒がキラキラときらめいて、楽しげに舞い踊っているようです。絞りを開けることで前後にある氷が大小さまざまにぼけ、奥行きを感じます。また、全体的にコントラストをつけつつ、四隅に暗い部分を入れることで、中央の明るい部分が際立ちました。飯間さん自身、夢中でシャッターを切ったとコメントにありましたが、その感動が見る人にも伝わる作品ですね。(吉住志穂先生)
ペンタックスK-3Ⅱ・DA50~135ミリ・F2.8・1/2500秒・ISO200・三脚・エプソンEP-10VA・エプソン写真用紙クリスピア/諏訪市・2月上旬,8:00頃

 

 

 

4月号 「夕照の花園」前口寿雄(茨城/フォトかがやき)

4月号「夕照の花園」前口寿雄(茨城)

【選評】これぞ風景写真という見事な作品。奇をてらわず基本セオリーである近景・中景・遠景と目線を動かす構図。明暗差のあるところをハーフNDで抑え、花の色を活かしています。またハーフNDの使用を感じさせない絶妙な色のバランスです。何よりも見た瞬間の印象がとても素晴らしく、かつ心に残り安心感を与えます。うまく撮って見せてやろうという作品が昨今、いろいろなコンテストで増えていますが、そんな中でじっくり狙って撮った、粘る心が伝わってきました。(相原正明先生)
ニコンD810・AFニッコール24~70ミリ・C-PL,ハーフND・F14・1/5秒・ISO100・三脚/佐渡市・6月上旬,18:30頃

 

 

 

5月号 「歓喜の朝」大熊正行(東京/林 惣一写真教室,フォトかがやき)

5月号「歓喜の朝」大熊正行(東京)

【選評】雪原から顔を出す雑草を大きくとらえ朝焼けの風光を表現した美しい作品です。前景から中景、そして遠景へと視線を誘導する画面構成はバランスも良く、風景の一体感を引き出しています。また、見過ごしやすいポイントを押さえながら自身の歓喜を再現するための目的を持った露出調整。撮影からレタッチ、プリントに至る一連のプロセスに作者の強いこだわりを感じました。特にこのペーパーを選択したことにより朝焼けを抑え、雪原の階調が美しく再現されています。(田中達也先生)
ニコンD610・AFニッコール24~120ミリ・ハーフND・F18・1/30秒・ISO200・三脚・キヤノンPIXUS PRO-100・ピクトリコプロセミグロスペーパー/福島県北塩原村・11月下旬,7:00頃

 

 

 

6月号 「荒野の燭光」新田浩爾(長野)

6月号「荒野の燭光」新田浩爾(長野)

【選評】雲間からにわかに太陽の光が注ぎ込み、斜面に虹を描いています。空の上にかかる虹と違い、すぐ目の前にあって辿り着けそうに思えてしまいます。白く神々しい虹が、枯れ木が立つ荒々しいガレ場にかかるという対比が魅力ですね。木と木を結ぶ架け橋のようなフレーミングも素敵です。的確なテクニックと素晴らしい自然現象に出くわした運の良さも相まっての受賞です。(吉住志穂先生)
キヤノンEOS5D MarkⅡ・EF17~40ミリ・PL・F13・1/160秒・ISO160・三脚/群馬県草津町・10月上旬,8:00頃

 

 

 

7月号 「落日模様」山村英司(神奈川)

7月号「落日模様」山村英司(神奈川)

【選評】様々なものにおいて、本当に良いものというのはシンプルに作られているものです。黒と白の輪郭線だけで描かれた富士山と夕日。暗めの露出で作品全体に重厚感を与え、単純化された構図と夕陽を真ん中に入れる大胆さが強いインパクトを生んでいます。撮影の知識が増え、多くのテクニックが身につくと、あれこれ試してみたくなるものですが、良いものをだけを引き出して、ストレートに見せるという、作品づくりに大切な原点を見た気がします。(吉住志穂先生)
ペンタックス67Ⅱ・SMC300ミリ・F22・1/250秒・フジクロームベルビア50・三脚/山梨県山中湖村・1月上旬,16:00頃

 

 

 

8月号 「雪音」堀川 宏(熊本/フォト熊彩)

8月号「雪音」堀川 宏(熊本)

【選評】絵画のような1枚。初めて見た瞬間にこの作品と恋に落ちたと言ったらよいだろう。構図、光、色、馬の動き、どれを取っても申し分なく、審査後、家に帰ってからも絵が脳裏に焼きつくほど。まさにキラーフォト。細かい点ですが、馬の前右足が雪を掻くところが雪の重さを強調しています。まさにこれぞ作品という1枚でした。(相原正明先生)
ペンタックスK-3・シグマAF18~35ミリ・F8・1/400秒・ISO200・エプソンPX-H6000・アワガミプレミオ雲流/阿蘇市・1月下旬,9:00頃

 

 

 

9月号 「波濤」亀井秀樹 (広島/フォトクラブ「ミスト」)

9月号「波濤」亀井秀樹(広島)

【選評】波が砕け、飛び散る瞬間をとらえた迫力ある作品です。それだけならば狙って撮れないことはありません。この作品の優れた点は、迫る波頭と海鳥の組み合わせです。まるで驚き、立ち止まるような海鳥の姿がとらえられています。恐ろしくもどこか美しさを感じさせるクリーム色の波頭、慌てる海鳥。偶然の出来事とはいえ、これほどまでにチャンスを生かした作品は稀有です。手持ちで狙いすました作者の腕前に驚きました。(田中達也先生)
オリンパスOM-D E-M1 MarkⅡ・Mズイコーデジタル12~100ミリ・1/2000 秒オート(-0.7 補正・F14)・ISO800 / 鳥取市・10月中旬,13:00頃

 

 

 

10月号 「桜日和」高見澤ます子(長野/八ヶ岳写真クラブ)

10月号「桜日和」高見澤ます子(長野)

【選評】スカッと明るく、元気になる写真です。奇をてらわずに、真正面から被写体と対峙した姿勢と視点に拍手を送りたい。なぜか暗い写真、重厚な写真でなければだめと勘違いしている方が多いようです。しかし、直球勝負で素直に美しさを訴求することはとても大切だと思います。暗い社会情勢の中にあっては、気持ちを明るくするタイムリーな作品です。(相原正明先生)
ペンタックスK-7・タムロンAF18~200ミリ・C-PL・F11・1/400秒・ISO800・三脚/山梨県富士河口湖町・4月上旬,14:00頃

 

 

 

11月号 「セイタカシギのいる光景」冨永貴則(兵庫)

11月号「セイタカシギのいる光景」冨永貴則(兵庫)

【選評】シギが波紋を広げ、ポツンと佇む光景からは、モノトーンの表現も加わり静けさと寂しさが伝わってきます。メインの鳥は小さく点景ですが、前ボケと背景の草地のあしらい方がうまく、この場所の雰囲気をよく伝えています。そして彩度をなくしセピア調に処理したことで印象的で格調の高い作品となりました。小さな沼地で出会った何気ないシーンですが、作者の思い入れやこだわりが感じられます。(田中達也先生)
キヤノンEOS5D MarkⅢ・EF100~400ミリ・F5.6・1/400秒・エプソンSC-PX5VⅡ・キヤノンプレミアムマット/ニュージーランド・9月下旬,9:30頃

 

 

 

12月号 「棚田の日暮」吉本直志(佐賀)

12月号「棚田の日暮」吉本直志(佐賀)

【選評】「嘘のような風景」などと素晴らしい光景を指すことがありますが、まさに現実離れした完成度。夕陽が没する前の鮮やかな赤から闇が迫る深い青へのグラデーションが美しく、それが黒く縁取られた棚田の畔に空の色が反映し、まるで影絵作品のようです。縦位置構図による奥行き感も加わり、バランスの取れたフレーミングで無駄がありません。この場に何度も通われた吉本さんの努力が実りましたね。(吉住志穂先生)
キヤノンEOS5DsR・EF24~105ミリ・ハーフND・F11・1/30 秒・ISO500・三脚・キヤノンPIXUS PRO-10S・ピクトリコプロセミグロスペーパー/佐賀県玄海町・5月上旬,19:00頃